法律をかじった者などは、「コンプライアンス=法令順守」という意味で、カタカナ英語の「コンプライアンス」をカッコいいものとして使うことが多く見受けられますが、どこまで本質をつかんだ使い方をしているかは、はなはだ疑問です。
平成26年1月27日の週の日経新聞夕刊に連載の郷原信郎弁護士の『人間発見』で、「コンプライアンス、「法令遵守」でない」というタイトルに目が止まりました。
具体的な記述部分は、次の通りです。
「コンプライアンスについて・・・「柔らかい」「しなやか」ということです。「守らせる」とか「縛る」といったギスギスしたものとは違う・・・単純に法令を守れといっても、法が実態からずれていて解決しない問題があるとは感じていました。でも法令順守でないとしたら何なのか。法令の背後にある、社会が要請していることに応えて行くことがコンプライアンスだという発想になっていきました。」
ここでも気になる記述があります。
「法が実態からずれていて解決しない問題がある・・・」
法の実務に直面する機会の多い仕事に就いていますが、「法律は常に現実社会の10年前と10年後にある」と思っています。
極めて逆説的ですが、法は現実社会の実態より10年遅れていると同時に、10年先を行っている、ということです。
別の表現をすると、今の実態に法が追いついていないところがある反面、今後の社会変化を見据えて、あるべき姿に今の実態を変革させようとしているところがあります。人事考課や教育訓練も似たようなところがありますね。
他に調べてみると、大久保和孝氏(新日本監査法人CSR推進部長)の著書「会社員のためのCSR入門」(共著、第一法規)にも、以下のように記述されています。
「英語のcomplyは「満たす」の意である。コンプライアンスは社会からの要請に対して、いかに柔軟に、しなやかに調和していくかが問われているのである。」
「「企業がどうすれば良いのか」ではなく、「企業は、いかに社会が求めているものに対応できるか」。」
同じようなことを言っていますが、後者は、「コンプライアンスは、社会のニーズを満たし社会問題をビジネスを通じて解決するというCSRの根幹部分を指す」とまで言及しています。
「CSRで社会問題(Social Issue)をビジネス化」といったところがビジネスのヒントとなりそうです。